読書(6) 「悪魔とのおしゃべり」 さとうみつろう

 帯に書かれていた「”善い行い”をし続けて幸せになれた奴はいるか?」という挑戦的なキャッチフレーズに魅かれて購入してしまいました(そもそもキャッチフレーズとは挑戦的なものです)。善人過ぎる自分に嫌気がさしていたのでしょう(といっても僕の主観的な感想です。極端な善人ほど周囲にとって迷惑なものはなく、僕も周囲に迷惑を振りまいているかもしれません)。

 著者は自身の哲学的な思想を、登場人物と悪魔(神様)の会話を通して披露していきます。残念ながら無学な僕には、著者の思想が量子力学的、脳科学的、哲学的、レゲエ的に「正しい」理解に基づいているのかどうかよくわかりませんでした。「正しいことを疑え」という著者からしてみれば、それすらあまり意味のないことなのでしょう。僕的には理解できることもあれば理解できないこともあり、同意できることもあれば同意できないこともあり、役に立つ考えもあれば役に立たない考えもありました。

 僕は自分の「正しさ」に疑いを持っているからこそ、この本を手に取ったわけですが、著者は読者に「不正」を勧めているわけではありません。彼が読者に求めているのは「正」、「不正」を超越することです。いわばアウフヘーベンです。ただ僕は、今はそんな悟りの境地にも似たステージに立ちたいと思っているわけではありません。超越どころかこれからますます「正」と「不正」の葛藤の中に飲み込まれていくことでしょう。それを楽しめるようになったとき僕は著者と同じような境地に辿りついているのかもしれません。

悪魔とのおしゃべり

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